ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

中学時代、日が暮れて家族が寝てから自分はよく自転車で旅に出ていた。ママチャリをしっかり灯火しつつ、ウォークマンの音量を大きめにし、リュックに少しのお金が入った財布を入れ、特に目的地もなく長野を彷徨っていた。土手や、狭すぎず広すぎない道がお気に入りだった。遠くでも近所と変わらないコンビニにより、菓子パンを買って現地で食べたりしていた。遠征が目的ではないので、急に飽きた時に帰ることがうんざりしない程度の距離まで行っては、遠回りしたりしながら家へ帰っていた。誰に教わったわけでもない、自分で考えた、自分を満たす手段だった。そこには自分しかおらず、そこにいる自分は確かに満足していた。むしろ、沢山の家があるのに自分しか夜の散歩をしていないことが不思議でさえあった。沢山並ぶ家を見ているときの印象はその頃から今でも変わらない。本当に全部の家に人が住んでいて、それぞれの人生にそれぞれの人生特有のなにかを持っているんだろうか?もしそうだとしたらなぜ夜はこんなにも静かなのだろうか?