落伍
僕は今川原にいるのだが、見るからに浮浪者のおっさんが僕の車の近くにいて帰りたくても帰れない状況にある。おっさんは何をするでもなく揺れている。よく見るとそれほど高齢ではないように見える。早くどいてくれないだろうか。
「おい。にいちゃん俺のことツイッターかなんかに書いてるだろ」
おっさんに話しかけられてしまった。
「いや、書いてませんが」
「いいんだよべつに。書け書け」
いや、本当に書いていないんだが。
「俺のことを叩いていい存在だと思ってるからそうやって書くんだろ。俺を叩いたところで、誰も俺の味方なんてしないからな。それを分かって書いてるんだろ」
そういう人はいるかもしれないが、完全な濡れ衣だ。
「にいちゃんみたいな若いもんがそんなことしか楽しみがないのは嘆かわしいことだよ。その責任の一端は俺にもある。こんな世の中になっちまうのをただ見てたからな」
めちゃくちゃ喋るじゃないか。寂しかったのか。
「だから俺ににいちゃんを責める資格はないって思うわけさ。だから書けよ。ツイッター」
なんでツイッター限定なんだ。
「あの、それ僕の車なんで、もう出るんでどいててくださいね」
「どくから書けよ。絶対にな。俺もにいちゃんたち世代に申し訳ない気持ちはあるからさ。それで許してくれよな」
「はあ。分かりましたんで、もう行かなくちゃまずいんで」
「またサンドバッグが必要になったらいつでも来ていいからな。もっとも、ここにいるとは限らんけどな。わははは」
いるだろ絶対。ツイッターではないが書いといてあげるよ。