ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

Moth

母上のヒステリーがどうやら集大成を迎えようとしている。言うまでもなくそれは悲劇だが、それを未然に防いでしまうことほどの親不孝はないのではないだろうか。

思い起こせば母上は定期的に、常人ではなかなか見ないくらいの激昂を見せていた。それらの伏線がついに回収されると思うと感慨深い。

その背中を見て私も育ってきた。その心は「癇癪を起こさずに生きていると何者かに飼い慣らされてような感じがする」だ。「こんな現状に満足するほど私は安くない」というものだ。

しかし近頃の母上ときたらどうだろう、怒りにまず往年のキレがないし、なんだか筋も通ってないように見えてしまいがちだ。勢いで誤魔化すのは昔からだが、その勢いすら萎れてなんだか哀愁を感じてしまう。それでももちろん初見の人は面食らうくらいのパワーはあるが、そんな為に何十年もがむしゃらに当たり散らしてきたわけではないはずだ。

体力的な衰えによってパフォーマンスに陰りが出るのは仕方ないことだと思う。しかしアプローチ次第では円熟を見せることは可能なはずだ。たとえば、取り返しのつかないキレ方をするとかして、こちらを圧倒してほしい。何年も付き合わされてきたのだから。