劇場版sktngy
「はい、次の方どうぞ」
「はい。よろしくお願いします」
「え〜。熊田さんね。享年は22歳で、死因は他殺、と。ほほうそれで怨霊になったわけですな。それはそれは、よくぞ成仏してくれましたな。」
「えっ、いや、え?」
「まあまあ。60年近くも怨霊やってるともう来るに来れなくなったりするもんなんですがね。まあ立場上軽々しいことも言えませんが、私個人としてはあっぱれと言いたいですな。」
「いや、あの他殺ってなんのことでしょう?私は老衰のはずなんですが。」
「そんなはずはないですよ。だって私どもが間違えるなんて、そんなことありえます?」
「そりゃごもっともなんですけど、私も身に覚えがないのでね。今朝起きたらなんだか妙に体が軽くてね。どうしたもんかと思って足元を見たら足が無くなってたんです。ああこれはいよいよ私にもお迎えが来たかと気がつきましてね。独り身ではあったけども、それなりに、私なりにね、充実した人生だったなあとそこで…。」
「はい、はい。それはいいんですけど、あなたが死んだのは22歳の時の話なのでね。とするとさしづめ、あなたは自分が死んだことに気付いてなかったってことでしょうね。」
「ええっ。いや。そんなことって。そんな馬鹿な話ありえるんですか?」
「私も聞いたことないですけどね。状況から考えるとそれしかないかと。」
「だって私は何十年も警備員として立派に働きあげたんですよ。ああそうだ!10数年前の話ですが、不審者を私おっぱらいましたよ!」
「怨霊を見て驚いただけじゃないですか」
「じゃあえっと、私テレビを見るのが趣味だったんですが、ちゃんと鑑賞したり電源切ったりできていましたよ。」
「それくらいなら怨霊のできることの範疇なんじゃないですかね。」
「そもそも!第一足がないことに何十年も気付かないなんて、そんなこと…。」
「現にこうしてありましたからね。これ以上無駄話してる時間もないんで。まあ心中はお察ししますが、ちょっと手続きに進みましょうか。」
「ちょっと待ってくださいよ。それじゃあ死んでても生きてても私の人生なんて大差なかったってことになりませんか?それじゃあ私の人生って一体、なんだったって言うんです?」