ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

今日の夢〜

北朝鮮が無事アメリカに核を打ち込み、当面の見通し通り世界には混沌が訪れている。かくいう私も混沌に乗じて自我を解放しようとしている。しかしこれは生来私の抱えている自我なのだろうか。それとも混沌以前に堆積していた自我が混沌の到来によって変容してしまったものなのではないだろうかとも近頃は感じる。混沌以来私の頭は冴えている。少なくとも私はそう感じている。混沌が訪れる前は毎日寝ていても生きていけたのだ。混沌というやつには存外脳の働きを促進する作用でもあるのではないだろうか。

北朝鮮は1度目の打ち上げに失敗した。それにもかかわらず、今アメリカかのどこそれはネズミ一匹いないという。もう一週間は経っているからひょっとしたらそろそろ湧いてきてるかもしれないが、食糧には困ってるんじゃないだろうか。その後の北朝鮮がどうなっているかは分からない。とにかく毎日ものすごい量の情報が飛び交うのだ。ニュース番組以外やらなくなったテレビを見るほど私は暇ではない。電気の通った私のコンピュータは次のステップとして体を動かしたがっているのだ。とにかくその1度目の失敗というのが私にインスピレーションを与え、夜も寝かしてくれなくなったという次第なのである。

要するに私もミサイルを打つのだ。私はそれの搭乗員である。普通のミサイルに搭乗員がいるかどうかは知らないが、もうコックピットを作ってしまったのだからもうつべこべ言う段階ではないだろう。とにかく私は今コックピットに載っていて、発射の瞬間を迎えようとしている。発射に成功はない。「こういう軌道を描いて飛ぼう」とかいうことを意図的に考慮から取り除いたため、奇跡的にキレイに飛ぼうがそれは失敗であり、成功だ。私の心は決まった。秒針が12に辿り着いたら私は失敗する。

なんのシミュレーションもしていなかったため、発射の衝撃は私の意識を奪った。気がついたら私は滑空していた。北朝鮮に1度目に飛ばされ、爆発すらせずに海に沈んだ一基目のミサイルの気持ちを私は味わっているのだ。思いの外そこには落胆や絶望はなく、空と海とでくどいほどにただただ青いだけだ。ただの優雅な空中散歩の後、私は海の藻屑のなった。ただ1つだけ気になる心残りが出来て死んでしまった。着水する数分前に私と似たようなミサイル一基とすれ違い、搭乗員と目が合ったような気がしたのだが、あれは私の見間違いかそれとも幻覚の類だったのだろうか?

ハムスター

小学校の低学年の頃、クラスでハムスターを飼育していた。その頃の担任の先生は自分たちに対して、「かわいいから触りたいという気持ちも分かりますが、あんまりベタベタと触るとハムスターにとっては大きなストレスになって死んでしまうので、あまりベタベタ触らないようにしましょう。」と注意されたことが自分にとっては小さな衝撃だった。ハムスターを自分に置き換え、自分もベタベタ触られたら死ぬのではないだろうかと思ったような印象がある。

それが自分の性質を説明してくれた言葉だったのか、自分の性質を形作る言葉だったのかはわからないが、今でも他人に触れられると死ぬような感じが一瞬する。「触るのには限界値があるから、なるべく残機を残すためにも触らないでおいてくれ。」というような気持ちが一瞬だが湧いてくる。別に人に触られるのが嫌だとか、触って欲しくないとかいうわけではないのだが、不意に触られることがあったりすると、なんか「ああっ」と、「やっちまったよ」と思ってしまうのである。

死に方もインド的

照りつける日差しだけは一人前に熱くなってきた。新しい畑の段取りをボチボチ始めなければいけなくて、正直に言うとダルい。日差しに比べたら風はまだ涼しい感じもするので、今のうちに段取りした方がいい事は確かなのだろう。もたもたしていたらそのうち風も温風になってしまう。

私が重い腰を上げあぐねていると、自転車に乗った老人が近寄ってきた。50代後半くらいだろうか。色黒でメガネをかけていて白髪。服装からするとなんだかインド人っぽい雰囲気だが、人相からして日本人だろう。老人は無感情ながら小刻みに震えた声で話しかけてきた。

「日赤はどこでしょうか。」

「日赤?全然この辺りではないですよ。そこ右に曲がって真っ直ぐ行ったら運動公園があるでしょう。そこを左に曲がって住宅公園についたら右に曲がって、そこを真っ直ぐ行ったところです。」

「ありがとう。」

 

次の日も私はその老人に同じ場所で話しかけられた。

「日赤の行き方をもう一度聞いてもいいですか。」

「運動公園は分かりますよね。」

「はい。」

「運動公園を左に曲がって、住宅公園のところの交差点を右です。」

「ありがとうございます。」

「大丈夫ですか?車で乗せて行きましょうか?」

「ありがとうございます。大丈夫です。」

 

老人は次の日も私の元へきた。

「運動公園から住宅公園まではどのくらいの距離でしょうか。」

「まあそこそこありますね。住宅公園のところの交差点はあれですよ。市場みたいなのがありますよ。あのりんごのでっかい絵が描いてあるとこ。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「気をつけてくださいね〜。」

 

翌日ついに老人は私のところへ訪れなかった。

「結局日赤には辿り着けずに死んじゃったか。だから載せていくって言ったのになあ。」

もう畑の段取りも出来ているので、私は今日はもう帰って昼まで休むことにした。

 

低次元親子

「なんで片付けらんないの!もうゴミ袋渡してから3日も経つでしょ!なんでこんなこともできないの!」

「いや、落ち着いてよ。なんでそんな昂ぶってんの急に。」

「あんたが全然片付けないから私が全部ゴミまとめて入れたのよ!『なんで私がこんなことしなきゃいけないの』ってずーっと思いながら!なんであんな汚い部屋ですごせるのよ!」

「要するに部屋片付けさせたいんでしょ?だったらそう言ってくれない?なんでなんでって、理由聞く気なんてないじゃん。『なんで』って言うからいつも答えるけど、結局燃えてるとこに薪をくべてる感じしかしないんだよね。それがとにかくすごいストレスだからさ、本当に理由が知りたい時以外はなんでって言わないでくれない?」

「じゃあなんて言えばいいのよ」

「片付けさせたいんでしょ?『片付けろ』って言えばわかるよ。」

「じゃあ片付けて」

「うん。じゃあゴミ袋貸して」

「これ最後のゴミ袋なの!あんたが早く片付けないから、ゴミ袋渡してから3日も経ってんのよ!難しいこと言ってないのよ!片付けるだけのこと!なんでものの10分もあればできることをやってくれないのよ!」

ここで俺キレる。

「ねえ、なんでって言うなって言ったよね!なんで言ったの?」

「…わかった」

「わかったってなに?なんで言ったか聞いたんだけど、それが正しい解答?日本語としてあってると思って言ってる?」

「わかったからわかったって言ってんの」

「あんた自分の主張を無条件で受け入れさせることしか考えてなくて会話成立しないね。忘れてたんでしょ?」

「うん」

「じゃあそう言ってくんない?俺のさっきの質問に対する答えは『わかった』じゃなくて『忘れた』だから。会話の体裁は成立させよ?じゃないとこっちのストレスがえげつないからさ。」

「確かに忘れたけど、その時忘れたって答えるかは私の勝手でしょ。私はそれで成立してると思ってんだから。あと私の方がどれだけあんたのことでストレス抱えてるか分かってんの?あんたに言いたいけど我慢してることいっぱいあるんだからね!」

「いや、そんな話今されても。なんでって聞いたら『◯◯だから』おれはちゃんと返して欲しいだけなんだけど。」

「だからそれはあんたのルールでしょ。私はあんたが『なんで』って言われて怒ってることが分かったから『分かった』って言ったの。だいたいなんでそんなに『なんで』って言っちゃいけないのよ」

「だから、今までの長い母さんと暮らして人生においてね、今までなんでか聞かれたことも何百回とあるわけだけど、その中のイメージではそれに答える事でよかったことが一回もないように思っちゃってんだよ。」

「なんでかなんて答えてくれてないじゃない」

「いやだから、今日の話じゃなくて。」

「さっきから色々なんでか聞いてんのに、あんたなんにも答えてないじゃないのよ!」

「だからさ…。」

「なんでそんなに自分のことばっかり言えんなよ!私は3日前に言ってゴミ袋も渡したのに、全然捨ててないから『なんでこんなこともできないのよ』ってイライライライラしながらきったないあんたの部屋のゴミをゴミ袋に詰め込んでたのよ。私も潔癖症ってわけじゃないけどね。なんであんな部屋で生活できんのよ!しんじらんないわよ!」

「3日前にゴミ袋渡しただけでなんでそんなにキレられんの…。というか『これからはここにゴミ捨ててね』って意味で渡されたのかと思ってたし。それに何度も何度もなんでなんでって…。なんでそんなになんでか聞くの?答えが聞きたいわけではないでしょ?」

「なんでか聞いてんだから聞きたいに決まってるじゃない!当たり前でしょ!?あんたこそなんでそんなに嫌なのよ!」

「いやだからさ、話聞いてる?」

「聞いてるわよ!そういうあんたこそ私の話聞いてないでしょ?どう言ったら分かってくれんの?」

妄想噺

落語「女子会」

 

とある居酒屋で先輩と後輩による女子会が開かれることになっていて、先に到着した先輩が後輩を待っている。この先輩、恋愛においては百戦錬磨。数々の男を倒して来ていて、後輩を待っている間にもまた男との別れが成立したところだ。後輩はあとから来ると早速今日のメインテーマである男について先輩に相談し始めた。

後輩の話が正しいとすればどう聴いてもただの優しくて仕事もできるいい男なのだが、恋愛経験の少ない後輩は男の細かい特徴が色々と気になるらしい。そんないい男と後輩がくっつくのが面白くない先輩は、後輩の気にする特徴について「それはその男にこういう性質があるからだよ。」と、でまかせを教えてなんとか後輩に悪印象を持たせようとする。

後輩「でも私、臆病になって考えすぎなのかな〜って思ったりもするんですよねえ」

先輩「あんたくらいの年だとそうよね。でも私も今だから分かるけど、根気(婚期)よく考えなきゃいけない年頃なのよ。」

無限の下限

無限という概念はつまり人間の想定の範囲内のことだと思っている。一京とか一亥くらいまでは教養として知ってはいるけど、兆とかの上は正直もう全部無限でいいと思う。というか兆も1兆バイトなら1TBでいいし、これからの人生で世話になることは普通にないと思う。さらに言えば一億個の何かを目の当たりにしたら「これは無限だな」と思うだろうと思う。それで言うと1000万も無限でいいが、100万あたりからなんとなく微妙になってくる。1ミリオンだ。

子供の頃からテレビ番組の賞金といえば100万円だし、馴染みのない数字ではない。しかし100万円をもって無限から脱するかといえば果たしてそうだろうか。あれは一万円札100枚だ。ということは自分が勝手に親近感を抱いていたのは100だということになる。純然たる100万はすなわち無限だ。

10万は中途半端なので無限でいいとして、1万はどうだろうか。1万といえば縦100、横100の方眼が当てはまる。これは自分の手に負える規模だろうか。正直言って自分には自信がないので、1万も無限に加えさせてもらいたい。ではその平方根の100ならどうだろう。行けそうなんじゃないか。小学生で習う九九と大体一緒だし、イメージもしやすい感じがする。

人それぞれキャパがあって、無限の下限もそれこそ無限通りあるとは思うし、普段扱う数が多ければキャパも増えるだろう。この日記は約630文字。自分のキャパはもう超えている感じがするのでもう書くのを辞めようと思う。

今日の夢

近頃はもう春とは言えなくなってきているくらいの暖かさなのだが、昨日の夕方から長めの雨が降っていたせいか心なしか今日は空気が普段よりもひんやりしている。久しぶりの雨のおかげで空気は澄んでいて、空に目をやると大きめの塊の雲がちらほらまだ残っている。

今日も幼馴染のお母さんから小遣いをもらい、なんの病気かは知らないが病人の幼馴染を助手席に載せてドライブをしている。幼馴染いわく家でずっと寝ていると体に障るらしい。風をなるべく多く浴びたいがために窓を全開にしているが、俺としては若干肌寒い。あと一度寒かったら窓を閉めさせてもらったかもしれないような冷気だが、幼馴染は気持ち良さそうに浴びている。

「結局お前ってどんな病気なの?」

「病気じゃなくって呪いだって前から言ってるでしょ。可愛すぎるって呪い。私があんまり可愛いもんだから、空気中の悪魔が私にだけ沢山まとわりついてくんのよ。今それを風で振り払ってるの。あんただって密室にずっといたら悪魔にまとわりつかれて息苦しくなってくるでしょ。私は可愛いから集まってくる勢いが違うのよ。」

いつも通りこんな調子でいつものコースを回り、幼馴染の家に着いた。

「まあまたなんかあったら言えよ。」

「言ったら来てくれんの?」

「そりゃまあな」

俺が車に乗り込む途中、大きめの声で「絶対だからね」と念を押された。その声に俺は驚き、「そんなデカい声で言わなくても」と思って少し癇に障った。