ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

めゆ

「ここが近道なんだよ」と言われてついてきたけど、なかなか雰囲気があっていい道だな。色んな畑の間で自然がいっぱいなのだが、森なんかと違って完全に人の手が加えられ尽くしている感じがなんともいえない不思議な雰囲気を醸し出している。畑に欠かせない用水路は地面より高い場所を流れていて、僕たち3人はコンクリートで出来たその縁の上を歩いている。先導する2人は兄弟で、僕は今日その家にお邪魔させてもらう。

非日常的な雰囲気は終始続いていたが、途中水路がぐちゃぐちゃの迷路のようになっている箇所があり、そこの異質感は飛び抜けていた。コンクリートの迷路の中をゆるやかなスピードで水が流れ続けている。兄弟もそこはお気に入りのスポットらしく、僕ら3人はそこでしばらく遊んでから再び進み始めた。

 

兄弟の家での時間は楽しいものだったが、そろそろ帰ろうかと思う僕の心はにわかにざわついていた。外が暗くなってきていたからだ。「暗くなったら足下がよく見えずに迷路に落ちてしまうんじゃないか」「あの迷路に落ちたら終わりだ」という不安が僕の脳内を占拠しつつあった。

ただそんな心配も杞憂に終わることになった。早めに帰ることを告げると兄弟は通常の帰り道を教えてくれたのだ。あの迷路へはまた明るい時に1人で行ってみようと思う。