資本主義
「あのさ〜、まだ始めてないわけ?」
「は、はい」
「あんたいくつ?もう30になるんでしょ?」
「27です……」
「一緒でしょ?そんな歳にもなってね〜。周りはもうみんなもうやってるでしょ」
「ま、まあ大体は、そうですね」
「ほら〜そうでしょ?あんたもいい歳なんだから、やりなさいよ早く」
「でも、マルチ商法でしょ……」
「それを悪い意味で捉えてるのなんて、今時あんたくらいよ?なに?なんかの思想にでも染まってるわけ?」
「いえ、特には……」
「じゃあなんで始めないのよ」
「先に始めた方が得するじゃないですか……」
「それを分かっててずっと始めなかったあんたの自己責任じゃない?この歳になるまで何してたわけ?今からでもやっといた方がいいわよって。親御さんもその方が安心するでしょう」
「それはまあ、そうかもしれないですけど……」
「そうでしょう?何を強がってんのよ。まあ私もう帰るけど、次会う時までに始めんのよ!いいわね!」
「ま、まあ、考えておきます」
「ってことがあったんだよ!」
俺は昔からの親友と飲んでいる。
「あはは、いるねえ。そういうおばさん」
「あんなばばあに言われて始めるやついないっつうの!」
「そりゃそうだわな」
「そう言うお前もやってんだろうが!こら!」
「ま、まぁそうだけどさ。事情というか、アレが違うじゃん」
「まあな、お前んちは親がこの辺の幹部だもんな」
「そうそう。俺がお前だったら、俺だって反抗するさ」
「反抗してるわけじゃないわい!胡散臭いから嫌なだけだよ。なんかいいことあんのかよ?」
「まああれだな。とりあえず彼女はすぐできると思うわ。簡単に」
「あーあー。まあそうだろうな。頭空っぽの女がすぐ捕まるだろうな!」
「わはは。俺の立場なら怒らなきゃいけないんだろうけど、実際そうだからなんも言えねーわ」
「だろ?女の方がすぐ始めるもんな。女なんてもう約9割入ってんだろ?」
「それはあれだろ。二十代?だろ?たしか」
「まぁなんだっていいけどさ、そんなんで彼女できて嬉しいもんかね?あー、まあ嬉しいか。嬉しいよな!そりゃ!」
「酔っ払いだな〜。まあ傷心みたいだし今日はお前千円でいいよ」
「おっ、さすが幹部!言ってくれるね〜」
「任せとけよ」
「俺が始めたら優遇してくれよな!」
「あはは。出来る範囲で協力させてもらうよ」