ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

童貞

「愛してるって言ってくれたら私はあなたのものよ」って言われてるようなもんだけどなんでそんな事しなきゃならないんだ。俺は実際は愛してるかもしれないけど、愛してるなんて思ったことはないしそんなことを口に出すのは軽率な印象を受ける。

「女にそこまでされて手を出さないなんて男じゃない」って友達は言うかもしれないけど、俺はそういう尺度で生きてないしお前はこの話に関係ないからそんな熱量で説教するのはおかしい。少し黙っててほしい。

たしかに一理はある。俺だってそういう風になる方向に行くように振舞っていた節があるし、相手の女からしたらある種予定調和というか、空気を読んだというか、なんにせよああいう態度になるのは異常とはとても言えない。しかし俺はどうにも溜飲が下がらない。

俺は結局「愛してる」と言うと思う。そしてあの女を抱くだろう。結局それが童貞の限界だ。俺は一生気持ちは童貞のままなんだろう。女の要領の良さには恐怖さえ覚える。彼女たちは俺が考えないことを日頃考え、俺の出来ないことが出来る。それを認めたくない俺の中のプライドの残滓が、もしかしたら最後の抵抗をしているだけなのかもしれない。