ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

満月

満月の夜は脱皮する。古い皮膚が邪魔でしかたない。張り詰める古い皮膚。ところどころ隙間から新しい皮膚が見えてる。そういうところに限って痒い。しかし搔けない。掻くとボロボロと古い皮膚が散らかって不潔なのだ。あくまで自然に、服を脱ぐように剥がせるようになるまでじっと待つ。寝たら多分掻いてしまう。寝ないようにしないといけない。首筋が痒い。手の甲が痒い。頭皮が痒い。腰が痒い。唇が痒い。これもあと数時間の辛抱だ。新しい皮膚になるのは気分がいい。行動力が湧いてくる。ポジティブになる。満月が明るい。山とか道がはっきりと見える。散らからないのなら今すぐでも掻きむしりたい。うずうずする。これもあと少しの辛抱だ。我慢できないほどの痒みではない。