ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

QOL

自分にはどうやら病院を嫌がる血が通っているらしい。父方の祖父は命に関わる入院中に看護師に噛み付いて脱走を試みたし、母方の祖父は末期ガンなのに現在進行形で抵抗を続けている。そんな姿に母親は現在進行形で呆れているし、父方の祖母も苦労していたことが窺い知れる。

母方の祖父は半世紀以上ヘビースモーカーを貫いた人で、母親は会う度に「タバコ辞めろ」と詰め寄り、毎回言い合いになっていたらしい。そんなことから察するにとっくに覚悟はできていたのだろうか、末期ガンになった今も飄々としていて、会うと冗談を飛ばして周りを笑わせてくれる。

ただそんなときでも自分の母親は笑わずに呆れ顔を保っている。そんな様子を見ていると、どれだけ頑固なのだろうかとこっちが呆れてくる。そもそも、自分は吸わないけど健康なんて気にしてタバコを吸う人間はいないと思う。同居しているならまだしも、もう棲む家も違う人間にタバコをやめろなんて言う権利はあるのだろうか。ろくに娯楽もない山奥で「これで頑張って生きてやるよ」とタバコで妥協してあげて頑張つまてきた祖父の矜持みたいなのを汲み取る気概はないのだろうか。

さきほど父方の祖母にガンの方の祖父の話をしたときの反応も、呆れに近いものだった。我が家にいる女どもの共感能力というか、察する力というか、汲み取る力というか、寄り添う能力はどこに行ってしまったのかと自分は今憤慨している。母親と父方の祖母は仕事大好き人間というお気楽な人種なので、細やかな人間の情緒みたいなものを理解できないのではないかと思う。