ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

音楽料亭

最近他人を載せて運転させられることがよくある。どうやら自分の役割になったようだ。自分は安全運転至上主義という名の小心者なので、運転についてはいつも通りやっておけばまず問題ないことは分かっている。しかし一人で運転してる時と一緒だと少し違和感を禁じ得ない要素が1つある。車内のBGMだ。

自分一人で運転しているときと同じ音量ではおそらく載っている誰もが不快な思いをすると思うので、音量聞こえるか聞こえないくらいかまでいつも下げる。下げているので、多分聞こえていないんだと思う。そうと分かっていてもやはりどう受け止められているのか気になってしまうし、知らない人を載せた時なんかは「この曲知ってたりするのかな」とかついつい思ってしまう。

それくらいならまあ別にすぐどうでもよくなるのだけれど、1番変な感じになるのが父親一人を載せている時だ。大抵そういう時父親は酔っ払っていて、おそらく「音楽がかかっている」という程度の意識しかないのだろう。それが分かっていてもなお、なぜか自分の音楽のレベルが試されているかのような気分に陥るのだ。

父の料亭を継ぐ為に修行を重ねた息子が修行を終え、父に料理の味見をさせている感覚とでも言ったらいいのだろうか。左の酩酊した父親の姿を確認してもなお、そんな感覚に囚われるのだ。おそらく父親の意識がハッキリしていたとしても、「聞いたことない曲だな」くらいにしか思われないのだろう。それでもやはり父と子の関係が続く限り、謎の音楽料亭に迷い込むことは避けられなさそうな気がする。