ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

防草シート

今日は父が不在だったので、祖母に「何か手伝ってほしいことはないか」と聞いてみた。そしたら父が午前中に作業していた畑へ連れて行かれ、ここを手伝ってほしいと言われた。確かに少し草が生えていたので、自分は熱中症になりそうだと危惧しながらも草取りを手伝うことにした。

あるとき祖母は壁に立てかけてある防草シート(土の上に敷くやつ)の存在に気付き、これを敷かなきゃと言い出した。それは明らかに、次に来た時に何かしようと父が準備したものだった(今思うとひょっとしたら片付けた後のシートだったのかもしれない)。なので自分は「シートは置いといて草を取ろう」と提案した。確かに、草取りもシート敷きもどちらも必要な仕事ではあるのだが、父が段取りした仕事を無断で引き継いで勝手にやるのはなんだか気が引けたのだ。しかしシートが気になって仕方ない祖母のことはもう止められず、自分は渋々手伝うことになった。

あるスペースに敷き終え、次のスペースに敷きはじめるとき、ふと祖母を見ると、じっとそのスペースを見渡していた。その時の祖母の表情が、自分にはなんとも面白かった。

目を細め、畑を見渡す祖母。老練の船乗りが海を見渡してその日の海を読み取っているかのような表情だった。しかしその時の祖母の心には息子のこと、自分からすると父のことなんて1mmも無かったと思う。他人が準備した仕事を勝手に自分の基準で散らかしてるのに、さもプロの仕事をしているような表情が自分のツボに入った。

実際問題、父は「シートを敷いておいてくれてありがとう」と思うかもしれない。しかしまた1から敷き直さなければならなくなるかもしれない可能性も十分ある。その準備をした父には何も聞いていないので、何も分からないのである。そういうことを一切考えないプロの表情というのは滑稽で、なんともいえない笑いを誘った。しかし敷き直すことになったときにその手伝いをさせられるのもまた自分なので、その事を思い出すと自分はすぐに憂鬱になった。