低次元親子
「なんで片付けらんないの!もうゴミ袋渡してから3日も経つでしょ!なんでこんなこともできないの!」
「いや、落ち着いてよ。なんでそんな昂ぶってんの急に。」
「あんたが全然片付けないから私が全部ゴミまとめて入れたのよ!『なんで私がこんなことしなきゃいけないの』ってずーっと思いながら!なんであんな汚い部屋ですごせるのよ!」
「要するに部屋片付けさせたいんでしょ?だったらそう言ってくれない?なんでなんでって、理由聞く気なんてないじゃん。『なんで』って言うからいつも答えるけど、結局燃えてるとこに薪をくべてる感じしかしないんだよね。それがとにかくすごいストレスだからさ、本当に理由が知りたい時以外はなんでって言わないでくれない?」
「じゃあなんて言えばいいのよ」
「片付けさせたいんでしょ?『片付けろ』って言えばわかるよ。」
「じゃあ片付けて」
「うん。じゃあゴミ袋貸して」
「これ最後のゴミ袋なの!あんたが早く片付けないから、ゴミ袋渡してから3日も経ってんのよ!難しいこと言ってないのよ!片付けるだけのこと!なんでものの10分もあればできることをやってくれないのよ!」
ここで俺キレる。
「ねえ、なんでって言うなって言ったよね!なんで言ったの?」
「…わかった」
「わかったってなに?なんで言ったか聞いたんだけど、それが正しい解答?日本語としてあってると思って言ってる?」
「わかったからわかったって言ってんの」
「あんた自分の主張を無条件で受け入れさせることしか考えてなくて会話成立しないね。忘れてたんでしょ?」
「うん」
「じゃあそう言ってくんない?俺のさっきの質問に対する答えは『わかった』じゃなくて『忘れた』だから。会話の体裁は成立させよ?じゃないとこっちのストレスがえげつないからさ。」
「確かに忘れたけど、その時忘れたって答えるかは私の勝手でしょ。私はそれで成立してると思ってんだから。あと私の方がどれだけあんたのことでストレス抱えてるか分かってんの?あんたに言いたいけど我慢してることいっぱいあるんだからね!」
「いや、そんな話今されても。なんでって聞いたら『◯◯だから』おれはちゃんと返して欲しいだけなんだけど。」
「だからそれはあんたのルールでしょ。私はあんたが『なんで』って言われて怒ってることが分かったから『分かった』って言ったの。だいたいなんでそんなに『なんで』って言っちゃいけないのよ」
「だから、今までの長い母さんと暮らして人生においてね、今までなんでか聞かれたことも何百回とあるわけだけど、その中のイメージではそれに答える事でよかったことが一回もないように思っちゃってんだよ。」
「なんでかなんて答えてくれてないじゃない」
「いやだから、今日の話じゃなくて。」
「さっきから色々なんでか聞いてんのに、あんたなんにも答えてないじゃないのよ!」
「だからさ…。」
「なんでそんなに自分のことばっかり言えんなよ!私は3日前に言ってゴミ袋も渡したのに、全然捨ててないから『なんでこんなこともできないのよ』ってイライライライラしながらきったないあんたの部屋のゴミをゴミ袋に詰め込んでたのよ。私も潔癖症ってわけじゃないけどね。なんであんな部屋で生活できんのよ!しんじらんないわよ!」
「3日前にゴミ袋渡しただけでなんでそんなにキレられんの…。というか『これからはここにゴミ捨ててね』って意味で渡されたのかと思ってたし。それに何度も何度もなんでなんでって…。なんでそんなになんでか聞くの?答えが聞きたいわけではないでしょ?」
「なんでか聞いてんだから聞きたいに決まってるじゃない!当たり前でしょ!?あんたこそなんでそんなに嫌なのよ!」
「いやだからさ、話聞いてる?」
「聞いてるわよ!そういうあんたこそ私の話聞いてないでしょ?どう言ったら分かってくれんの?」