ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

うたた寝の夢

真っ暗な田舎道を運転している。この試みを始めたころの僕はなにか非日常を感じたかっただけなんじゃないだろうか。自信はないがおそらく、その彼はもう満足して寝入ってしまっている。取り残された僕はただただ、今は早く帰ってお風呂に入りたい。

真っ暗な田舎道は、真っ直ぐな分は問題ないのだが曲がる時に難儀する。道が狭くて一発でクイッと曲がる事は難しく、切り返し切り返し曲がらなければ何かに擦ったりどこかに落ちてしまう危険がある。かといって街灯もないから、フロントライトで一度見た自分の記憶と、かすかな傾斜を感じ取る自分の平衡感覚に大部分を委ねなくてはならなくなる。

僕はいつも細心だが、僕の気まぐれで連れてきた非日常が気まぐれに僕へ気まぐれを分割払いしてくれるため、不意に総毛立つのを僕はその都度梳かしていかなければならない。

この下り坂を下りきれば大通りに合流できるのだが、僕の目がおかしくなった訳でないならばなにやら赤いランプが点滅しているのが見える。僕の早まる鼓動を抑えながら赤いランプとすれ違ったが、検問かと思えばただそこで重大事件が起きただけのようだった。なにやら夏祭りに来ていた子供たちを沢山集めて連れ去ろうとした輩がいたらしい。

「びっくりさせやがって。俺の好奇心が不名誉な銘を打たれるところだったじゃねえか。」赤ランプを通り過ぎて十分な距離をとると、僕の優しい非日常は外に向かって声を荒げた。その声とすれ違いに入ってきた夜風の気持ち良さに今更気が付き、僕は情けなくて自嘲した。