ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

今日夢

高くて立派な杉が生え揃っている山奥の博物館の駐車場。50すぎた女と70に満たない男が業務を終えて事務室に帰ろうと歩いている。男は言う。

「いやいや、これが本当に乗せられたってわけじゃなくて、一目見た瞬間に運命を感じたのよ。村越さんには止められたけどさ、あの人はほら、あれだから。でもほんと、『今買わなきゃ』って思ったわけね。別にあんなとこ行きたかったら行けるわけだから、いくらだって考える時間は持てたんだけどさ。まあでもやっぱり直感ってのは信じるべきだね。現に今でも後悔してないもの。」

女は答える。

「いいじゃない。あんた。それはもう買っといて正解。あたしもそう思うんだから平気だって。でもあたしも年してきて『杖欲しい』って現実問題思うようになってきたけど、杖に80万円出すっていうのは男の人の考え方だね。あたしなんてその辺にあつらえの棒落ちてたらそれでもいいくらいだもん。」

女は自分で言いながら、自分で大笑いしている。男も合わせて笑っている。

「せんちゃんはまだまだ杖なんていらないでしょ。まだそんな年してないのに、何言ってるんだか。俺がせんちゃんくらいの歳の頃なんてもう、樋本さんにまあこき使われて、杖なんて言ったら『またお前は』って言って、本当にもう。」

「まあいいじゃないほらほら。今日も持ってきてるんでしょ。早く見せてよ。あたし知らなかったよそんな格好いい杖あんたが使ってることなんて。」

2人は事務室に到着した。日は今にも暮れそうだったが、まだ暮れずに立派な杉と博物館の裏手を照らしている。