ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

夜の街でやること

子供の頃、夜に車であまり馴染みのない街を通るとワクワクした。四階建てくらいのビルがたくさん並んでいるだけで異郷の地の感じがするのに、しかも夜となると異世界の感が強かったからだ。たとえばそんな街中で気軽に外に出たりしたら、どこからともなく集まったマフィアみたいな人たちに囲まれてピンチになるんじゃないかって何割かは本気で思っていたし、高い鉄塔やビルの上で赤いランプが点滅したりしているのを見かけると「自分には想像もつかない意味があって、何かと何かが交信しているんじゃないだろう。」と想像を掻き立てられた。

当たり前のような気もするが、今ではそんなことは一切思わなくなってしまった。夜の街で車から降りてみても、誰か来るとしたら職務質問だろうし、ランプの点滅の意味は知らないけど勝手に「大した意味なんてないだろうな」なんて思ってしまう。

しかしそれは感性を失ったわけではなく、成長して夜の街から受ける印象と現実が切り離せたということなんじゃないだろうかとも思う。本気で思うことはなくなったが、いまだに自分の中のマフィアが襲って来るとすれば時間は夜だし、秘密の交信も夜にしかできないことだからだ。