ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

昼の夢

のたうっている黒人に袋小路に追い詰められた。黒人は音楽を流し続けている。音楽と緊張感に満たされている空間はさながらミュージックビデオのワンシーンのようだ。俺はどうにか塀をよじ登ったが、このままやりすごすには幅が20cmくらいしかない塀を渡らなければならない。黒人は相変わらず不気味にのたうっている。俺は意を決して塀に一歩踏み出した。

すると黒人がいる通路の袋小路は深い谷底になり黒人はのたうったまま下に落ちていった。底の渓流に落ちると、水飛沫の代わりに夜空が飛び散り、カラスが舞った。俺はそのまま崖の上を進んでいく。進む先の方に森が見えるのだ。とりあえずそこにいって落ち着きたい。

森が近づくにつれ、木々が樫であることを判別できる程度に冷静にもなってきた。来た道を振り返ってみると、ロイ・バッティが谷底を見つめている。俺はギクリとして、動きを止め、様子を見ることにした。しばらくするとロイ・バッティは谷底に身を投げ、夜空と散った。俺はまた急いで森に向かった。

樫の森は不気味な雰囲気で、ずっと気がつかなかったが、音楽も鳴り止んでいないではないか。樫をさらによく見ると夥しい蟻が這っていて、どんとん樫を食い荒らしている。俺は歩みを進めているのだけど、さっき見ていた樫の森が幻想だったかのように、蟻によって樫の森は少しずつ消えていっているのが分かる。

歩みを進めるにつれて、蟻のせいで樫の森の体積は減っているはずだ。それと同時に空は拓けて行くはずなのに、歩みを進めるごとに辺りは暗くなって行く。もしかしたら蟻やカラスが夜になっていっているのかもしれない。