ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

僕はいま女の子とデートをしている。坂道の商店街を、2人で上へ上へ登っているのだが、なかなか目的の店につかない。体力的に、俺はまだ行ける。彼女の様子を見てみると、彼女もまだ大丈夫そうだ。顔色ひとつ変わっていない。

この商店街は山の周りを螺旋状に巡っていて、奥が見えない。歩き進んでいくごとに新しい店がどんどん見えてくるのだ。次くるか、次こそくるかと思いながら歩くが、一向にお目当の店は現れない。僕はそろそろ疲れてきた。彼女に対して申し訳ない気持ちもどんどん湧いてくる。しかし彼女の顔を見ると、涼しい顔をしているのだ。はたから見たら、僕の方がヘトヘトだが、僕は気を使って彼女に言った。

「あの赤い店まで歩いてみても目当ての店が見えなかったら、諦めて他のお店に入ろっか」

彼女は言った。

「わたしはそれでもいいけど、いいの?こんなところまで来たのに」

 

赤い店の前まで来ても、目当ての店は現れなかった。しかし路地裏というか、脇道に繋がる新たな道が、新たに視界に入ってきた。僕はガッカリしながらも彼女に試しに言ってみた。

「あの道なんだろう。ちょっと行ってみない?」

彼女は僕以上にワクワクした様子で、快く受け入れてくれた。