ほかほかしっとり

思ったよりほかほか

今日の夢

この国では歴代の王の目が特殊な方法で保存され、ある部屋で額縁に入れられて飾られている。眼球と瞼、眉毛まで含めた皮膚が腐敗しないように処理されているのだ。

 私は今回、新たに王に就任した。就任を祝う華やかな式典を終え、締めくくりの儀として私は目の部屋を謁見する。側近たちは式典の緊張から解放された様子で、ぐったりしている。民衆や来賓などの目がない儀礼なので、さきほどまでの張り詰めた雰囲気とはまた違った空気だ。特別な者しか入れない部屋というわけではないのだが、今回は儀礼なのでしきたりに則って私は一人で部屋に入った。

 部屋は窓のないつくりになっており、歴代の王の目が飾ってある以外に装飾もされていない。その王の目も部屋に入った左手の壁にしかなく、あと4か5の王が死なないと埋まらなさそうだ。王は生前に自分の目の展示方法を指定することになっていて、それはいつでも変更できる。死んだ時点で指定していた方法で保存されるというルールだ。私はせっかくなので、ひとつひとつの目をじっくりと見ていった。

 思いの外というか、考えてみれば共感できるような気がするが、瞼を閉じているものが多かった。私は52代目の王なのだが、瞼を開けているのは初代を含めた4か5の王だけだった。意外だったのは、沈着冷静で国の経済的な発展にストイックに勤めていた先代の王、私の父の目が開いていたことだ。当時を思い出させるどこか虚ろで老いた父の目と太い眉毛を見た私は、どういった感情を抱いたらいいのか分からず、さきほどの式典で確かになりかけた王としての自覚もなぜか、俄かに揺らいだ。