差別
差別意識の正体はなんなんだろうか。差別に反対する人は「確かに存在する」「絶対的な悪」と思って喧伝しているが、差別の正体を考察している人は見たことがない。
他人の発言に差別意識を感じる瞬間はたしかに存在するが、それがみんなが取り除こうとしている差別と同じ物なのかは自信を持てない。
差別はふんわりしていると思う。差別されたと思う瞬間も存在するけど、そう思う瞬間たいてい同時に「この人に悪気はないんだろうな」とも感じている気がする。
先入観は関連するワードに挙げられると思う。あと排斥する気持ちもたしかに内在すると思う。しかし日常に垣間見れる差別には、そういう側面よりも「自分が思われたくない自分」が強いというように自分は思う。
殊更非難することにより「自分はこれではない」と強調したい気持ちが差別として発露している場合が多いように思う。それはつまり「下手したら自分もそうなる」「下手したら自分もそこにカテゴライズされる」いう恐怖心が内在しているイメージがある。
キャサリン
近所の団地の中で昔友達とよく遊んでいた。そこにはたまにキャサリン?アリス?ジェニー?みたいな感じのあだ名で呼ばれている女性が出没していた。
彼女はゴスロリ服に身を包んだ100キロは超えてそうな160cmないくらいの20代前半くらいの女性で、いつも日傘を差していた。
彼女がだれか他の人と一緒にいるところを見たことはない。ムスッとした顔をいつもしていてそれ以外の表情も見たことない。
秋に友達とその公園でいいドングリを探しているとキャサリンがおもむろに近寄ってきて、ドングリを落とす木に日傘を突っ込んでかき回し始めた。
ドングリがたくさん落ちてきた。自分と友達は最初怖かったけど、大柄の女性の意外な優しさに驚き、一応お礼を言った。
その方は今も団地に暮らしているんだろうか。生きてたら30代後半になるんだろうか。
土手猫
道を渡って土手の方に行こうとしている猫がいた。渡りはじめていたのだが、自分の運転する車が通ったせいで元の茂みに引っ込んでしまった。自分はそのまま少し走ったところに車を停めたので、猫が土手に行くのを期待してずっと後ろを見つめていたがいよいよ猫が道を横断して土手へ行くことはなかった。きっと自分に邪魔をされたことによって目的地自体が変わってしまったんだと思う。自分がその道を通らなければ、猫は誰にも邪魔をされず当然のように土手へ行ったのだろう。だが邪魔をされてまで行きたい用事というのはなかったようだ。
夢
あ、あー。ここはもうそういう場所で確定完了なんですね?
私は生まれた頃からおばあちゃんから、ここは「◯△◻︎」という地名だよって聞いてて、キレイで可愛いなぁって、ステキだなって思ってたんだけど、結局いじめっ子達の言う通りだったんですねえ。
しかもここはもう大きい道路通るから住めないと、そりゃそうですよねえ、意地で無理やり住んでもいいけど騒音どころじゃありませんもんね!だってここが道になるんですもん。
今ののどかな風景から見たら想像もつきませんが、そんな冗談つく人たちには見えませんし、そうなるんでしょうね。
いえいえいえいえそんなそんな、私は反対じゃありませんし、悲しんでもいませんよ。感情でいうなら、なんだろ、強いて言えばまあ怒りですかね!おばあちゃんに対しても、自分に対しても!
ここから、ここが道になるんでしたっけ?じゃあここのスペースならまだ寝れたり〜、、、なんて!あはは、え?冗談に決まってるじゃないですか!ちょっとくらい笑ってくれても良くないですか?
山海
今そこそこの尿意を催している。実際にはしないが立ちションがしたい、野に放ちたい。なぜかは分からないがこんなに野に放ちたい尿は初めてなので記念に我慢している。そしてついでなので久しぶりに考察している。
自分は山に囲まれて育った人間なので、理想はやはり山だと思う。子供の時分、山に放ったことは多分あるので今回も上手くできると思う。跳ね返りが危惧されるので岩場というよりは茂みがいいと思う。贅沢をいえば少し高いところから下方に放つのがいい気がする。ただ高すぎるのは怖いので崖というより傾斜くらいの感じの方が堪能できるだろう。
山ばかり考えていたが海に放つのがどんな趣なのか気にならないわけではない。イメージは出来るが海に馴染みがないので想像の域を超えない。機会があれば是非試してみたいがあまり前のめりにはなれない。やはりまずは山だ。
単純に海と山で考えていたがひょっとしたら他の可能性もあるんだろうか。「汚したい」みたいな背徳的な欲求ではないので自然に限られてくるが、どうだろう。たまにはインフラに組み込まれず自然と一体になりたいという純粋な気持ちなので尊重してほしいものだが、手頃な山も知らないし外も暗いので機会的に排泄してこようと思う。
資本主義
「あのさ〜、まだ始めてないわけ?」
「は、はい」
「あんたいくつ?もう30になるんでしょ?」
「27です……」
「一緒でしょ?そんな歳にもなってね〜。周りはもうみんなもうやってるでしょ」
「ま、まあ大体は、そうですね」
「ほら〜そうでしょ?あんたもいい歳なんだから、やりなさいよ早く」
「でも、マルチ商法でしょ……」
「それを悪い意味で捉えてるのなんて、今時あんたくらいよ?なに?なんかの思想にでも染まってるわけ?」
「いえ、特には……」
「じゃあなんで始めないのよ」
「先に始めた方が得するじゃないですか……」
「それを分かっててずっと始めなかったあんたの自己責任じゃない?この歳になるまで何してたわけ?今からでもやっといた方がいいわよって。親御さんもその方が安心するでしょう」
「それはまあ、そうかもしれないですけど……」
「そうでしょう?何を強がってんのよ。まあ私もう帰るけど、次会う時までに始めんのよ!いいわね!」
「ま、まあ、考えておきます」
「ってことがあったんだよ!」
俺は昔からの親友と飲んでいる。
「あはは、いるねえ。そういうおばさん」
「あんなばばあに言われて始めるやついないっつうの!」
「そりゃそうだわな」
「そう言うお前もやってんだろうが!こら!」
「ま、まぁそうだけどさ。事情というか、アレが違うじゃん」
「まあな、お前んちは親がこの辺の幹部だもんな」
「そうそう。俺がお前だったら、俺だって反抗するさ」
「反抗してるわけじゃないわい!胡散臭いから嫌なだけだよ。なんかいいことあんのかよ?」
「まああれだな。とりあえず彼女はすぐできると思うわ。簡単に」
「あーあー。まあそうだろうな。頭空っぽの女がすぐ捕まるだろうな!」
「わはは。俺の立場なら怒らなきゃいけないんだろうけど、実際そうだからなんも言えねーわ」
「だろ?女の方がすぐ始めるもんな。女なんてもう約9割入ってんだろ?」
「それはあれだろ。二十代?だろ?たしか」
「まぁなんだっていいけどさ、そんなんで彼女できて嬉しいもんかね?あー、まあ嬉しいか。嬉しいよな!そりゃ!」
「酔っ払いだな〜。まあ傷心みたいだし今日はお前千円でいいよ」
「おっ、さすが幹部!言ってくれるね〜」
「任せとけよ」
「俺が始めたら優遇してくれよな!」
「あはは。出来る範囲で協力させてもらうよ」
成立
自分の身の回りにはこどもの頃から「成立している」事柄がほとんどなかったような気がする。田舎ではありがちなことだと思うが万事が済し崩し的であったり、惰性や妥協の産物だった。
「世の中そんなもんだ」と思う人もいるかもしれないが、それは現状に満足している人だと思う。自分の身の回りのものやことは、なにひとつとして満足はしていない。逆にいえば不満を抱えながら不安定な状態を保っていた。
数式は完成されている。=の左右は同じもので、それなのにその式にはしっかりと意味がある。自分はそういう数式の完璧さに憧れて理系に進んだのかもしれない。今日そんなことを思った。